「市議会における広聴機能としてのワークショップ」をテーマにした山本哲也鳥羽市議会議員からのレクチャー。先日参加した東海地方の若手市議会議員有志による集まりでのお話です。鳥羽市議会は議会基本条例による議会報告会の数が年37回で全国1位を記録したこともあるそうです。しかし、やり方や実態に不満や課題も多く(ex.中身がないだとか要望オンリーになってしまうだとか)、抜本的にやり方を変えることに。
TOBA未来トーク方式
新たな議会報告会を検討するために市議会で協議し、平成28年度より新たな議会報告会「TOBA未来トーク」を実施。その理念・概要は、1.地域課題の共有が主目的 2.テーマに沿った意見交換のみ 3.手上げ方式(依頼があった団体へ議員を派遣) 4.原則グループディスカッション方式 5.付箋等を多用し議論を可視化
時間曜日の制限はなく、申し込み=団体からの開催依頼は基本的に承るかたちで行い、議会事務局の関わり方は打ち合わせの日程や会場調整、その他書記や写真撮影等で、コアのところは議会が主導。ただ、手あげ方式といえどもやはり議会・議員側から営業をかけることもあるそう。やはり、そうそうたくさんの申し込みがあるわけではないということです。
派遣議員は、4班にグループを分け、基本はグループ単位での派遣だそうですが、派遣希望議員や相手の要望を優先します。この点については、少しでも有権者と関係性ができるという側面がある以上、相手先の派遣希望議員を聞くことで公平性は担保できるのか、不満は出てこないのかという素朴な疑問があります。質疑の時間がなかったので、また聞いてみたいと思います。
ワークショップ形式をやってみて
従来の議会報告会とはアプローチが違うことにより、議員にも変化があったそうです。そして、テーマを決めることによってやるべきことが議員と市民双方に明確化されるという利点。
課題としては、当然、全議員が理解できているわけではないということ、ファシリテーターをできる議員がかたまってしまうこと、それでもまだ意見の陳情などに走ってしまう人も多いことなどがあげられるそうです。課題を共有することが一番の目的であることを先に必ず伝え理解してもらうことが重要になります。
「フューチャーセンターの社会実装について」
またこの議会報告会のお話と関連して地方自治研究センターの栗田さんより「フューチャーセンター」についてのお話を伺いました。”住み良い地域にするために、自分も何かしたい”という気持ちをもっている方は多いと思います。しかし、NPOや自治体関係者、大学教員その他いろいろなセクターの方々と会う機会は果たしてあるでしょうか?
フューチャーセンターの定義は一様ではないそうですが、理念は「多様性のあるメンバーの対話による価値創造をする場」というもの。現代の諸問題は、一つのセクターだけでは解決困難なことも多いため、多様な関係者と双方向のコミュニケーションをとり、課題を解決、価値を創造する必要があるという現状認識からスタート。
1.参加者の多様性→呼びかけの必要性 2.課題設定 3.対話を生み出す場づくり←自由闊達な意見やアイデアをもとめる 4.全体のコーディネート→事務局の力も重要 5.成果への評価←セッションのみではなくその後も継続しての評価 が成立する5つの要素。
フューチャーセンターの社会実装を研究するグループは、モデルとして「TOBA未来トーク」へも参画し、第三者的視点から「成果の評価」なども行ってきたそうです。各種ステークホルダーと分野横断的な話をし、また解決策を提案できるという観点からみて、「議会報告会」はその仕組みの作り方によっては、よく言われる情報公開だけでなく非常に有用な課題設置→課題解決のモデルになることを確信したレクチャーでした。