フィンランドのネウボラに学ぶ、出産・子育て支援

「ネウボラ」という制度を聞いたことがあるでしょうか。フィンランドの子育て政策で、妊娠時からひとりひとりに支援員がつく。私はそのくらいの認識でした。実態はともかく、名張市や、その他の自治体でも◯◯版ネウボラと銘打って、政策を進めている自治体もあります。

今回の質問における調査のなかでも、子育てのワンストップ・サービスを考えている中で、やはり「ネウボラ」という単語を多く見ました。もう少し知りたいということもあって、書籍を購入し詳しく学んでみることにしました。ただ、まだ表面上に知識にとどまっているので、継続して勉強していきたいと思います。

ネウボラの全体像

「ネウボラ」とはフィンランド語で「助言・アドバイスの場」を意味するそうです。妊娠から就学期まで、かかりつけの専門職(主に保健師:フィンランドでは資格制ではなく実務系の高等教育機関卒業が要件)が担当の母子および家族全体に寄りそって支える制度の名称であると同時に、出産から子育て支援におけるワンストップの地域拠点でもあります。

またネウボラは妊娠期に対応するもの、そして産後から就学期までに対応するものとにわかれているそうです。このふたつのタテの連携はしっかりと図られています。また、全員対象のこれらふたつのネウボラとは別に、特定の人たちに対応する「家族ネウボラ」も存在します。

ネウボラのキーワード

フィンランドでは妊娠を知った女性はまず地元の「ネウボラ」に保健師(または助産師)との面談の予約の連絡をします。都市部を中心にインターネットでも予約ができるようになってきているそうです。日本では、妊娠届を自治体の窓口に提出し、母子健康手帳が交付されますが、フィンランドの場合、この窓口もネウボラとなっています。余談ですが、日本の母子健康手帳は妊娠期から就学期まで子どもの成長・発達・予防接種などの記録として国際的に高く評価されているそう。一方で子育てする家族の経済状況や、心身の状態、世帯状況はそこまでカバーできません。

ネウボラのキーワードは、全員対象で個別対応であることです。また、かかりつけの担当者がおり、対話を繰り返すことによって、継続した信頼関係が生まれます。現状や問題の把握が現場単位で一元化され、他職種との連携もおこないやすくなる感じを受けます。そして担当するスタッフは、専門の保健師であり、地方自治体の職員です。

ネウボラの現場と現状

専門職の人員配置については、出産にかかるネウボラでは妊婦80人にたいして保健師(助産師)1人、妊婦800人にたいして医師1人とするよう国が規定しています。また、子育てに関するネウボラでは、子ども300〜400人にたいして、保健師1人、2400〜2800人の子どもにたいして医師1人という配置だそうです。最初から、生活面ないしは健康面でハイリスクであることがあきらかな場合は、より専門的な部署がサポートを行います。

妊娠期においても、子育てにかかるものであっても、ネウボラでは「総合検診」をおこなうことになっているそうです。これは、妊婦や母親だけでなく、パートナーの同席が求められたり、家族全体が対象です。家族の健康状態、カップルの関係性、不安ごとや期待、生活状況、経済状況などをカバーするものです。

出産後の家庭訪問は、日本の施策でもおこなわれています。ネウボラでも同様に産後間もないタイミングでおこなわれますが、かかりつけの保健師などが訪問するところが違いです。妊娠期から継続してコミュニケーションをとってきた担当者が訪問するのと、はじめて会うスタッフが対応するのとは、当事者の受け止め方は精神的にかなり違ってくるものだと思います。

津市では

6月の一般質問でも質問させていただきましたが、津市の出産・子育て支援の施策は健康センターでの母子支援事業、子育て支援コーディネーターなど、なかなか充実していると感じました。ただ、事前ヒアリングで現状把握をおこなった際には、各施策の実施部局や実施場所、窓口などが多いことで、聞いている私自身が全体像を把握することができなかったのです。

何事もワンストップ・サービスすればいいとは限りませんが、医療や子育てなど厚生分野は関係者や法律、規則などが多く複雑なため、つとめて当事者がほんとうに使いやすい設計をすることが重要だと思います。窓口や場所の集約、かたちだけにならない支援策を整えることを目指します。


◎参考:『ネウボラ ・フィンランドの出産子育て支援』 (髙橋睦子著:かもがわ出版)

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