NHK『欲望の資本主義』を見て

経済成長を求めることは是なのか? ー 番組に出演するセドラチェクのインタビュー記事が経済誌でも特集されていたり、資本主義は果たして正常に機能しているのか、将来も機能するのか、パラダイムシフトがおこるのではないかという観点の特集が最近よく目につきます。

そんななか、NHKで少し前に放送された「欲望の資本主義2018〜闇の力が目覚める時〜」をみました(ちなみにナレーションは相対性理論のやくしまるえつこ!)。冒頭、イノベーション理論で有名なシュンペーターの「資本主義はその成功ゆえ自壊する」というマルクスの唯物史観めいた言葉から始まります。

「経済成長という呪い」という本を著したダニエル・コーエン、先のインタビュー記事にもでたチェコの経済学者セドラチェク、その対談の聞き手である安田氏、経済学の教科書でおなじみスティグリッツも登場します。音楽やその他表現も含めて、NHKのドキュメントはほんとうに質が高いと思います。軽い哲学や社会学の本を読んでいるような、随所に知的好奇心をそそられ、それでいて難解すぎることはない素晴らしいプログラム。

ただ、いろいろと現状を認識するためのヒントにはなるけれど、結局はいまの流れに乗らざるをえないだろうなというのは私の感想です。生産性しかり、イノベーションしかり、実際に国の政策もそのように動きます。経済とそれに裏付けられたパワー=権力(政治的外交的にそれをうまく利用できないのが日本という国ですが)は現実を生きる上では欠かせないもの。マキャベリズム的なリアリズムは社会においても個人においてもある程度は真実だと思います。

資本主義のパラダイムシフトが起きるとしたらどのようなものになるのか?…一気にくるのか、徐々に広がっていくのか。全く検討がつきません。つかないからこそ、現実主義をとらざるをえない。もしそれを崩せるものがあるとしたら、マルクス主義的、多数の専制的な考えになってイヤなのですが、有権者のチカラをもってして、統治機構を通じて権力行使をすることだと思います。それほど資本主義の自己拡大能力というものは強い。そう感じました。

以下は番組で気になった点のメモ・アウトラインです。


スタートアップ企業とベンチャーキャピタル
・日本でも課題となっている企業の新陳代謝=ゾンビ企業の存在(感想)
・NYではそのエコシステムがある
・人々の生活をイノベイトする、それは生活をよくするためと信じて
・シュンペーターの「創造的破壊」そこに資本主義の原動力がある
・イノベーションのジレンマでもある企業の栄枯盛衰(感想)
・デジタルテクノロジーは世界を席巻、しかし一方では世界は低成長という逆説
・格差につながるという見方もある → 力を持ったトップ層にさらに力が集中
・中流層はニューテクノロジーの恩恵を受けていない、仕事を時代遅れにする
・全体で見た人々の生産性は果たしてこれで上がるのか?

農業と産業革命の例
・新技術により農民が職を奪われる;生産性向上により労働の集約が不必要に
・都市にあふれた層が産業革命の一因=工場が受け皿
・受け皿なくば相当の社会的緊張があろう;果たしていまは?
・なぜ18世紀イギリスで産業革命がおこったのか?
・仮説だが当時のイギリスは賃金が高かった → 機会化に大きな意味があった
・資本主義は高賃金によって活性化される?
・労働者が低賃金で購買力がなければ技術革新は機能しない
・日本もアメリカも賃金が上昇していない
・過剰生産 → 売上Down → 投資回避 → 投機へ:危険な状況
・生産性と連動して労働者の賃金もあげていかなければならない

社会民主主義の流れ?
・自由だけではなく平等を in アメリカ!
・バーニー・サンダースの選挙運動が大きかった
・いつも思うがアメリカの選挙集会の若者の数!正直羨ましい(感想)

生産活動=資本主義=自由???
・商品の生産そのものが資本主義
・そもそも生産する=Produce=Pro(前)+Duce(もってくる)
・商品の生産=いまの資本主義はすべてがショウのよう
・Facebookのいいね!も商品の生産である
・トランプは資本主義の顔、重要なのはショウを見せること
・ポピュリズムという分析は的はずれ? 
・グローバリゼーションは経済プロセスであって政治的ではない
・不公平に対する反応と捉えなくはならない
・何%が排外主義に目覚めたとしてどこがポピュリズムなのか?

資本主義は成功し続けなければならない:破壊と商品価値の飽くなき追求
・私たちは恐怖と欲望に生きている
・人々が貯蓄に走りすぎると恐慌が起きる
・必要以上に安心をもとめてしまう
・ケインズは貨幣を月に例える;幻想
・人々の心にある無意識をコントロール→資本主義をコントロールする鍵

・使うためのお金が貯めるためのお金に:それは奴隷

悪徳の栄え:欲望の解放がルールを変えた
・レーガンとサッチャーの新自由主義;開放された市場の力
・金融資本主義の誕生
・トリクルダウン理論の幻想、富はアッパーに残るのみ

イノベーションをどう捉えるか?
・イノベーションによる生産性の上昇はマクロ的には認められない?
・ネットは生産者と消費者のマッチングに優れる;AribnbやUber
・ネットは需要と供給の法則を強化している
・まさにアダム・スミスの「見えざる手」であるインターネット市場
・ただしGAFA(Google Apple Facebook Amazon)の支配はどうなのか?
・その他には競争を促し、自らはその上に立つ→適正な競争か?

資本主義の「闇の力」とは何か
・ルーティンジョブはなくなりつつある;”創造的であれ、さもなくば去れ”
・社会は新たな競争の世界に突入し緊張感を強いられる
・「芸術家は不幸だ、常に想像力の欠如に恐怖している」=今の世界
・いつも自分が得意なことは何か、自分の能力の限界を試されている
・生産の形態、経済のあり方が人間のあり方をきめる=それが「闇の力」
・個人はその流れを変えることはできない
・結局は自由に使える時間こそが富→それこそが自由な人間

競争というものは実は存在しない?
・大企業の役員はエリートたちの村社会
・どんな産業でも一部の企業に利益が集中している
・競争なき資本主義、競争なき富の固定化
・シリコンバレーの租税回避の熱心さも付け加えておく

エピローグ
・果たして永久に資本主義は成長することができるのか?
・資本主義が崩壊するのが先か?
・多くの矛盾に対応する理論を構築することができるのか?


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